「おはよう。」


目を開けた時、そこに見えたものが一瞬把握できなかった。
私をずっと見つめている、眼鏡を外した零一さんのアップ。

「おはよう。」
「えっ?なんで…?」
「…おはよう。」
「あっ、おはようございます…」

氷室学級規則、第1条、「挨拶はきちんと」は健在らしい。

「よろしい。良く、眠っていたな。」
「あのー、私…」
「なんだ?」
「どうしてこんなことになっちゃってるんでしょうか?」

ここはまぎれもなく零一さんの寝室で。
パジャマ姿の零一さんの腕を枕にして。
お布団に隠れて見えないけれど、なんだかものすごく薄着?

「覚えていないのか?」
「はい…全く。」
「そんなことだろうとは思っていたが…」

確か、昨日は零一さんとドライブして、マスターさんのお店に寄って、
零一さんがピアノを弾いて、それから、なんだっけ…?

「あのお店に行ったのは覚えてます。」
「そうだ。そこで、なにか飲んだろう。」
「あっ、そういえばマスターさんが「新作のドリンクだよ」って
オレンジジュースみたいな…。」
「それを?」
「「飲んで、感想聞かせて」って言われたので一気に…」
「……」
「飲んだらなんだか体がフワーっとしてきて、その後は良くわかりません。」
「…、君は警戒心がなさ過ぎる。昨日、あいつが君に飲ませたのは酒だ。」
「えっ、あれお酒だったんですか?」
「そうだ。スクリュードライバーと言うカクテル、別名レディーキラーだ。
口当たりが良くてアルコール度数が分かりにくいので女性を酔わせるのに
最適だ、と言われるものだ。それを君は一気飲みして、記憶をなくした。」
「はあ、そうだったんですか。」
「全く、君は。昨日あいつには厳しく言っておいたが、君も、今後は
あいつの出すものに十分警戒するんだぞ。油断のならないやつだからな。」
「…はい。それで、どうして私はここに?」
「君を家まで送り届ける旨を連絡しようと君の家に電話したら、君の弟が出た。」
「尽が? それでなんて?」
「この連休を利用して御両親は旅行をされていて、家には彼一人だから、
酔っ払いの姉を連れて来られても介抱できない、もし可能なら一晩
私に預かってもらえないか、と彼は言った。私はそれを承知し、今に至る。」
「…零一さん、零一さんも警戒心が足りないみたいですよ…」
「なに?」
「うちの親、旅行に出かけてなんかいないんです。尽にだまされたんですよ。」
「…そうなのか?」
「そうなんです。」
「……」
「私達って、相当お人好しなんでしょうか…」
「…それも、いいのかもしれない…」
「えっ?」
「君をこうして、ひとりじめできる…」

私の体は、あっという間に零一さんの腕の中にからめ取られてしまった。
体が密着して、身動きができない…。

「もっと、そばにおいで…」
「こ、これ以上はちょっと無理なんじゃ…」
「こうすればいい…」

唇を重ねられる。
強引に舌が割り込んできて、口の中を探られる。
混ざりあっただ液が、音をたてる…。

こんな激しいキスは、知らなかった。

「んっ、ちょっと、苦しい…」
「私は一晩中、苦しかった。」
「…?」
「もう…限界だ。」
「…零一さん」

キスが、首筋に落ちてくる。
くすぐったさと恥ずかしさで身をよじる。
吐息が、耳にかかる。

「やっ…。ダメですぅ。」
「……」
「…零一さん?」

きつく抱き締められた腕の中で、かろうじて首を回した。

「…寝てる?…」

一気に体の力が抜ける。
限界って…眠くて限界、ってこと…?
ついに…越えちゃうのかと思ったのに…。

零一さんのことだから、自分は一睡もせずに私のことを見てたんじゃないかな。
あり得る。
だったら起こすのは可哀想だから、このまま寝かせてあげよう。
めったに見られない零一さんの寝顔をゆっくり観察させてもらうから。
じーっと見守って、目を覚ましたらこう言うの。

「おはよう。良く眠っていましたね。」


Fin




寝るな、って感じですか(笑)ここに至るまでの零一さんの話を書いてはいるんですけど、まだ未完。
半分くらいまでは書けたんですけどね。一晩我慢できる男性の心理は良くわかりません…。
もう一ひねりアイデアが出てきたら先生が没収しに来ることでしょうね。さて、どうしようかなあ。
せっかくの落とし穴なのにいつまでもキス止まりでもねえ。精進しなくてはなりませんな。







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