Hypnotized Cat



高校の担任だった零一さんとおつきあいするようになって数カ月。
誰にも、なんにも気兼ねなく、ラブラブになれるはずだったのに、
いまだに進展がない。どんなにねだったって、軽く触れるキスがやっと。
ちょっと、欲求不満気味な私。

そのことを高校の友達に相談したら、えらく同情された。

「もーっ、そんなことだろうと思った。大体あの堅物のヒムロッチに
フツーの恋愛なんてできるわきゃないのよ!」
「そんな、味もふたもない言い方しなくてもいいじゃないの。
氷室先生もそれなりに考えていらっしゃると思うわ。」
「Non,non! 単に意気地なしなだけですわ!
恋愛は勢い、そうじゃなくって?」
「わたし、違うと思う…。先生がとっても大事に思ってくれてるって
ことだと思うの…。早いからっていいわけじゃないわよ、ねっ?」
「ねえ、私、どうしたらいいと思う…?」
「そりゃもうアンタ、押し倒すっきゃないっしょ!」
「ちょっと、はしたないわよ、それ。」
「セクシー衣装で誘惑、これしかないんじゃなくて?」
「それは…先生には効かないと思うの…」

実を言うと、大胆行動には何度か出た。
ちょっと露出多めの服を着てデートに行ったこともある。
その時は露骨に気に入らない、って顔をされて一日気まずくなった。
部屋に入れてもらった時は押し倒すどころか、半径1mにも入れてもらえず。
嫌われてるのかと思うくらい。もう、真意が全然わからない…。

「真意を知りたいなら、いい方法があるわよ。」
「ホント、志穂?」
「ええ、私、その分野にも興味があって今勉強してるんだけど…」

そう言って志穂が教えてくれたのは、なんと催眠術。
うまくかかれば、本音を全部話してくれる、って志穂は自信たっぷりに
話していたけど、うまく行くのかなあ…?


次の週。
零一さんの部屋を訪れた私は、さっそく催眠術を試してみることにした。
準備したものはキャンドル1本だけ。

「なんだ、これは。またくだらないことをするつもりだな?
先週高校の友達に会ったと言っていたな。どうせまた藤井に…」
「ち、違いますよ! これは志穂、有沢さんに聞いたんです。」
「有沢か。まあ、彼女なら信用してもいい。それで、これで何をするつもりだ?」
「え、あのー、そう、すごくリラックスするんですって。
最近疲れてるんじゃないかな、って思って。」
「私が疲れている? そんなふうに見えるか?」
「は、はい。ちょっと…。」
「私は疲れなど自覚していないが、君の心遣いは嬉しい。
せっかくだからその好意を受けることにしよう。」
「よかった…。」

ちょっと、言い訳苦しかったかな、と思ったけど。
なんとか乗り気にはなってくれたみたい。

「じゃあ、この光をじっと見つめてて下さい。
よけいなことを考えずに、集中して…」
「……」
「だんだん、瞼が重くなってきます…」
「……」
「私が3つ数えたら、あなたは完全に眠ってしまいます…
3、2、1、はい!」

零一さんの首ががくっと折れる。眠っちゃってる、みたい。
か、かかったのかな?
じゃあ、試しに…。

「コホン、では、私が指を鳴らしたら、あなたは猫になります…。」

パチン!

ゆっくりと零一さんが顔をあげる。
切れ長の目がそっと開く。

「にゃ〜お。」

思わず吹き出しそうになった。
それほどまでに不似合いなこの一声。普通の状態の零一さんが言うわけない。
これは、うまくかかってくれたみたい。

「じゃあ、次は…」
「にゃ〜ん。」
「えっ??」

そうだ、猫の催眠をとかないと、って思ったとたん、それは起こった。

「ごろごろ…」

完全に猫になり切ってしまった零一さんが私にすり寄ってきた。
今まで部屋の中では絶対に距離を保ってきた零一さんが、自分から私の頬に
自分の頬を密着させる。あまりにもびっくりして体が動かない…。

「ひゃっ」

いきなりほっぺたを舐められる。は、早く何とかしないと。
だけど勢いの付いた零一猫は止まらない。

悪戯な舌先は、ほっぺたから唇に移動してくる。
深く唇を重ねられて、息が止まりそう。頭の芯がボーっとしちゃう…。
どうしよう、これ、本当の零一さんじゃないのに…。

そうしている間にも、さらに零一猫はエスカレートする。
首筋に、耳に、舌を這わせられる…。

「やっ、やぁっ、やめて…」

わがままな猫は、言うことを全然聞いてくれないどころか、
のしかかられて、私は床に押し倒される形になってしまった。
猫になっても、力は男の人のままだから、はねかえせない…。

「んっ…、やぁん…」

耳たぶを甘噛みされる。体中に電気が走ったみたい。
なんかもう、何も考えられない…。

いつのまにかブラウスがはだけて、唇が胸元に迫ってくる。
い、いくら零一さんでも猫のままでこの先に進むなんてちょっと…。

「れ、零一さん!」
「にゃ〜お。」

だ、だめだ…。ちゃんと催眠術をとかないと。
でも、この体勢じゃ…。
ど、どうしよう…?

「気が済んだか?」

ふっと押さえ付けられていた力が緩む。

「えっ?」

そこには、ずれた眼鏡をまっすぐ掛けなおす零一さんがいた。

「あ、あのっ…」
「全く、あんな催眠術に私がかかるわけがなかろう。
君の悪戯に付き合ってやっただけだ。早く、その服をなおしなさい。」
「かかったふりをしてた、ってことですか…」
「そうだ。」
「それにしては…」
「なんだ?」
「いえ…」
「気は済んだんだな。今後はこんな下らないことをしないように。」
「気…済んでません…」
「なんだって?」
「済んでないんです。猫とじゃなくて、本物の零一さんと、その、
したい、んです…」
「コホン、き、君は自分が何を言っているのかわかっているのか?」
「わかってます。零一さんを催眠術にかけようとしたのも、私と
そういうことをする気があるのかどうか確かめようと思って…。」
「……」
「怒りました?」
「…いや…。
今まで、早急すぎるのではないかと自制をしてきたが…
それももう、限界を感じていた。しかも、今の猫のふりで刺激されて…」
「零一さん?」
「後悔しないな?」
「…はい。」
「よろしい。では…」

軽々と抱き上げられて寝室に運ばれる。
恥ずかしいのと恐いのとで、首にぎゅっとしがみつく。
ちらっと盗み見た零一さんの顔は真っ赤で。きっと私もそう。
だけど、もう後戻りはできない。したくない…。

薄暗い寝室に入ると、心臓の音が一段大きくなった。
ベッドに私を降ろしながら、零一さんは囁く。

「今度は、君が猫だ…。」
「にゃん。」



Fin





えー、またまた未遂ですが、やる気を漂わせてのエンディングとなっております。しかし、なんていう終わり方…。
この続きは…ちょっと書けないでしょうねえ。でももし万が一、書くことがあったら、たぶんすんなりとは行かない
でしょうねえ。(笑)だって、私が書く零一さんだもんvv 何もやらかさないで終わるわけないっしょ?
個人的には女の子大集合!を書くことが出来てご満悦です。あえて名前出さずに書きましたが、わかるでしょうか??







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