無謀少年



「先生! 氷室先生!」

聞き慣れない声に呼び止められて振り返ると、そこにはスポーツ刈りの小柄な少年がいた。
この少年の名は確か…。

「日比谷。」

先学期までは彼のクラスを担当していたが、今学期の時間割り変更で担当を外れている。
授業内容の質問ではないようだが。

「どうした、何か用か?」
「ハイ! 先生、ジブンを先生の弟子にして下さい!」
「弟子? 教え子という意味なら君は既に私の生徒だが。」
「そうじゃなくてですね、ジブンは先生みたいにカッコよくなりたいんです!
秘訣を教えて下さい!」
「くだらない…。もう少し節度のある質問をしなさい。以上。」
「ああ、先生、待って下さいよ!」

これ以上無駄な時間を使わされてはかなわないと立ち去ろうとしたのだが、
日比谷はさらに食い下がってきた。

「先生、お願いします!」
「私に近付きたいなら今は勉学に励みたまえ。」
「それじゃ間に合わないんですよ!今すぐ先生みたいにならないと!」
「何に間に合わないというのだ。」
「先輩が、先輩が卒業しちゃうんですよ!」
「なんだと?」

日比谷の口から思い掛けない名前が飛び出し、私は動揺した。
、氷室学級のエース、そして私の心をかき乱す生徒。
その彼女と日比谷との間にいったい何があるというのか。

「彼女が卒業すると、どうなるんだ。」
「ジブン、先輩のこと、尊敬してる、っていうか好き、なんですよ。
それで、思いきって先輩に聞いたんです。どういう人が理想なのか、って。
そうしたら、氷室先生みたいな人だっていうんで、これはチェックしないと、と思って。」
「…本当か?」
「えっ?」
「本当にが私が理想だと言ったのか?」
「ハイ! 間違いありません! ジブン、耳はいいんです!」
「そうか…」

が、私のことを…。
思わず頬が緩みそうになるのを押さえて、日比谷に言った。

「だから私の真似をしよう、と言うのか。」
「ハイ! 今までもかっこいい先輩のチェックしてきたんで、自信あります!」
「日比谷、君は大きな勘違いをしている…」

言葉を続けようとした時、背後から呼びかけられた。

「先生! 日比谷くん! なんか珍しい取り合わせですね。」
。」
「あ、先輩! 先輩からも先生に弟子入り、頼んで下さいよ!」
「えっ、今度は先生なの? やめときなさい、御迷惑よ。」
「だって、先輩この間アドバイスしてくれたじゃないですか!」
「アドバイス、ってまさか?」
「そうですよ。先輩のりそ…」
「ダメッ!!」

顔色を変えたが日比谷の口を押さえる。いきなり口を塞がれた日比谷は
目を白黒させている。

「ふえ、ふぇんぱひ?」
「黙ってなさい! もう、よけいなこと言わないの。先生、気にしないで下さい!さようなら!」
「あ、ああ…」

に口を塞がれたまま廊下を引きずられて行く日比谷を見送りながら私はひとりごちた。

、君が塞ごうとしたその言葉は、もう既に放たれてしまっている。無駄なことはやめて
その手を離しなさい…。)

簡単にに抱きかかえられる日比谷の体格を多少うらやましく思いながら、私は職員室へと歩を向けた。


Fin






ひびやんです…。短い…。苦手だからと言ってこんなに手抜きでいいんでしょうか。良くないですね…。
だけど、いい男チェックと独特の話し方以外に印象がなくてねえ。どう動かせば彼がかっこよく見えるのか
私には見当もつきません。本当にごめんなさい…。実際年下と付き合ったことがないわけじゃないけど
あんまりいい思い出がないのも一因かと。ご批判はBBSへどうぞ〜。深く反省中。



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