Tell me how 「なあんだ、そうか。なあんだ。」 電話を切ると、聖司は勢いよくベッドにダイブした。 うつ伏せて、枕に顔を押し付ける。 予定があるってなんなんだよ。 俺より大事な用なのかよ。 俺からの誘いを断るだなんて、地球防衛軍からの出撃要請でも出たって言うのか……。 まさか、紺野と会うのか? ……いや、あいつは今週末試験があるはずだ。 それをすっぽかしてあいつとデート、なんて。 …ないとは限らない? ……いや、まさか。 ・ ・ ・ 我ながら子供っぽい独占欲だっていうことはわかってる。 わかっていながら、ネガティブな思考のスパイラルは下降を続ける。 こんなに苦しい思いをするなら、出会わなければ良かった。 ただ嫌いになりたくて、ピアノを弾く日々の方がよっぽど楽だった。 ピアノは指を動かしさえすれば、結果を出してくれた。 その音色に満足はいかなくても、とにかく音は出た。 でも今は…。 「俺にどうしろって言うんだ……」 これ以上ない極上の音色を聞かせてくれたかと思えば、打っても打っても響かなくなる。 欲しいと思えば思うほど遠くて、その切なさに狂いそうになる。 もう何も考えたくなくて、聖司はピアノに向かう。 頭に浮かんでくるメロディーを片っ端から弾き殴る。 ショパン、ベートーヴェン、モーツアルト。 リスト、ドビュッシー、シュトラウス。 音を巡って行くうちに、一つのメロディーを思い出す。 Erik Satie:Je te veux 軽快なメロディーとは正反対に、濃密な歌詞を持つこの曲を。 ただひたすら、おまえが欲しい、と訴え続けるこの曲を。 おまえに聞かせたら、伝わるんだろうか。 「弾き方を……教えてくれよ」 眩しく光る、白鍵のような肌も。 吸い込まれそうになる、黒鍵のような瞳も。 全部、全部、俺のものにしたい。 いつか。 |
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