caution! このお話はワインレッドの魔術の続編です。 未読の方は、先に読まれることをお勧めします。




ワインレッドの涙



ワインレッドの大胆なドレスをまとった彼女を車の助手席に押し込むと
私は通常よりも荒っぽく車を発進させた。

「シートベルトを締めなさい。安全が確保できない。」

すっかり萎縮して、うつむいている彼女に声をかける。
彼女は緩慢な動作で私に従った。


それからお互い無言のまま、私の自宅に到着する。
降車し、助手席のドアを空けてやるが、彼女は降りようとしない。

「早く降りなさい。」
「・・・・・・」
「・・・全く。ならばこうするまでだ。」

私は再び彼女を抱き上げる。手足をばたつかせる彼女に、

「じっとしていなさい。落ちたらケガをするぞ。それとも落とされたいのか?」

半ば脅しのような言葉に、彼女は大人しくなった。
不満と不安の入り混じったような表情を浮かべ、私を見上げている。
こんな表情をさせたいわけではないのだが・・・。

複雑な気持ちを抱えながら部屋に入ると、まっすぐ寝室に向かった。
彼女の表情に不安の色が濃くなる。
今にも泣き出しそうな彼女を、そっとベッドに降ろした。

「さて、これがどういう状況か、わかっているな。」
「・・・零一さん・・・あの・・・」
「そんな大胆なドレスを着て、人前に現れるからだ。」
「ごめんなさい、だから・・・」

彼女はついに泣き出した。
泣かせてしまった罪悪感に苛まれながら、泣き顔も案外魅力的だ、などと
思う私がいた。以前の私ならけして抱かなかったであろう感情。

「泣くな・・・。」
「だって、零一さん怒ってるし、私、これからどうなっちゃうのかと思って・・・。」
「どうにもならない。君は少し誤解しているようだ。話を聞きなさい。
私が言いたいのは、魅力的な服装の君を、不特定多数の人間に見られて、私が平常心で
いられると思っているのか?ということだ。」
「・・・え?」
「君は全く気付いていないようだったが、不謹慎な視線を君に向けている輩が
あの場所に少なくとも6人はいた。そんな視線に君を晒しながら外出するなど
私には考えられない。だから着替えろ、と言ったのに・・・。」
「あの、それって・・・」
「・・・独占欲、だ。私以外の人間に魅力的な君を見せたくない・・・。
・・・私の言いたいのは以上だ。」
「零一さん・・・」

涙を瞳に溜めたまま、彼女は顔をほころばせた。
思わず抱きしめたい衝動に駆られたが、この状況でそれをすることは危険行為だ。

「・・・笑うな。」
「だって、嬉しいんですもん。零一さんが私に嫉妬してくれるなんて。」
「・・・・・・」
「先生が嫉妬してくれるなら、また着ちゃおうかな?」
「ダメだ! 今度こそどうなっても知らないぞ。」
「あ、そうそう。その"どうなっても知らない"っていうの、どういう意味だったんですか?」
「君に説教する、という意味だ。それ以上の意味はない!」
「本当に?」
「もう忘れなさい!!」

全く、それが誘惑の言葉だと、彼女は気付いていないのだろうか・・・。
無邪気というか、鈍いというか・・・。

「今度の火曜は祝日だったな。予定は空いているか?」
「はい、空いてます。」
「買い物に出かける。」
「え?買い物?」
「君のドレスを買いに行く。親類の結婚式には別のものを着ていきなさい。」
「零一さん、買ってくれるんですか?」
「そのつもりだが?」
「やったぁ!ありがとうございます!!」
「ベッドの上で暴れるな・・・。」

私はクローゼットからクリーニング済みのシャツを取り出すと、彼女に渡した。

「とにかく、その格好では・・・目のやり場に困る。これに着替えなさい。
着替えたらリビングに来なさい。コーヒーでも淹れておこう。」
「はい。わかりました。」

それだけ言うと、私は振り返らずに寝室を出た。
後ろ手にドアを閉めながらひとつ、ため息をつく。

「かなり、危なかった・・・。もっと理性を強化しなければ・・・。」

ワインレッドの酔いを覚ますため、私はコーヒーを淹れにキッチンに急いだ。



Fin




続きを望まれる声にお答えして。やっぱり何にも起きませんでした(笑)
このままじゃいつまでも未遂ですね。このカップルはそれでいいのかな?
先生が本気で暴走したらすごそう、って思っているのはきっと私だけでしょうね・・・。





前編 ワインレッドの魔術


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