溜息 中編



許せない・・・。

俺はきっと傷つける。

けど、もう良いのだ・・・離れていくのなら。

傷つけるだけ、傷つけて・・・消えてしまえ。こんな感情。



「何故わざわざ私の所に来て言うのだ?」



いつになく冷たい声に、彼女の顔が引きつった。



「あ、あの・・・せん・・・」

彼女の言葉を遮って言う。

「何故私に言うのだ。勝手に言えば良いだろう?勝手にすれば良いだろう?

それとも・・・私が普段から君にとって頼りがいのある教師だから、

こういう相談にも乗ってくれると思ったのか?」

「ちがっ・・・!そんなんじゃなくて!!」



「じゃあなんだ?

馬鹿馬鹿しい。

高校生の生ぬるい恋愛話を聞かされる為に私は教師をしているのではないし、

そんなことに付き合わされる暇は生憎無い。藤井にでも付き合ってもらいたまえ」



醜い感情が抑えられなくなる。

彼女の眼は涙ぐんでいて・・・それでも俺は冷酷に言葉を重ねていた。



「私は失望したよ」

「え・・・・?」

「君はそんなことに囚われないだろうと思っていたが、結局は・・・。

いや、私には邪魔する権利は無い。好きにすればいい。

たとえその選択が誰かを傷つけても、君は君の幸せを歩むが良い。

私は・・・何も言わない。これで満足か?」



最低の教師だと思ってくれ。

君に慕われるのは嬉しいこと。

けど離れてしまうのなら、こんな想いは消えてしまった方が良い。

俺は君に何もしてやれないよ・・・。

「せ・・・ん・・・せぇ・・・酷いです、そんなの・・・」

「なんとでも言いなさい。私が言っていることは紛れもない事実なのだから」

「・・・・!わたし・・・・は・・・」



抱きしめてやりたい。



「私は・・・。なんだ?」



今すぐにでも抱きしめてやりたい。



『君を愛している。他の男の所へなど、行かせない。離れていくのは許さない。

君は私のことだけを見ていればいいのだ。考えていればいいのだ。』



そう言ってやりたい。

しかし俺にそこまでする度胸はなかった。・・・単純に・・・怖かった。



拒絶されるのではないか。

もう二度と、俺の前で笑顔を見せてくれないのではないか。

そんな不安ばかりが渦巻いて、俺を前進させてはくれない。



「どうした。要件は早く済ませなさい」

「私は先生が真実を言っているようには思えません」

「・・・・何故だ」

「先生・・・さっきから私の眼を見てません」



何・・・?



「それが何故真実でない証拠になるのだ」

「いつも先生は自分を信じてるから迷いがない。

だから話すときは必ず人の眼を見て話してくれます。

けど、今の先生は・・・何かを誤魔化している時と同じ様に眼を見てくれません」



時々しゃくりあげながら言う彼女の言葉に俺はうろたえた。



・・・そして知らず、彼女を自分の腕の中に抱き寄せていた・・・。





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