溜息 後編 「っきゃ!」 「何故君には分かってしまうんだ・・・」 「え・・・?」 俺はもう自分を抑えられなくなった。 「俺は君を愛してる・・・けど辛いんだ・・・。 君は気づかぬうちに男を引き寄せ魅了する。 教師面なんてしてられるものか・・・! 何故立場が違うというだけで、こんなにも苦しまなくてはならない? 誰を愛するも個人の自由の筈だろう。なのに何故? 俺はこの感情を捨てきれない。自らを隠し通すなど無理だ。 ましてや君が他の男のところに行く姿など見たくもない。反吐が出る・・・!」 一人称が違うことも気にも留めず俺は言った。 そして次の彼女の言葉に、またしても俺はうろたえる羽目になった。 「私は・・・誰のところにも行きませんよ・・・?先生・・・」 「は・・・?」 「私が自分の想いを伝えたかったのは・・・先生ですから」 腕の中の彼女を見ると、涙がまだ出ていて・・・。 それでも彼女は笑っていて・・・。 「・・・ハハ・・・うれし・・・涙です」 いつものあの純粋な笑みを・・・向けて。 「私・・・に・・・?」 「そう、氷室零一先生に」 「本当か・・・?聞き間違いではないのか?夢だとか言ったら・・・私は狂うぞ・・・」 「本当です」 「・・・・・・」 「先生・・・?」 俺は・・・なんて酷いことを言ったんだ・・・。 「すまない・・・。君を傷つけた・・・。 まさか私にだとは思わず、逆上して酷いことを言ってしまった・・・最低だ・・・」 「せ、先生・・・!良いんです。私、気持ちが伝わって嬉しかった。だから・・・!」 もう、良いんです・・・。 彼女は言う。俺に、満面の笑みで。 誰よりも美しい君の存在。 離さない・・・離したくはない・・・存在。 俺は彼女の唇に触れ、重ねる。 彼女は頬を真っ赤にしていたけど、それさえも愛しい。 少し離してから言う。 「・・・ありがとう・・・」 心からの、感謝の言葉。 「私こそ・・・ありがとうございます・・・零一さん・・・」 壊れることのない見事な調和。 彼女となら出来る完全な調和。 永遠というものはないかも知れないけれど、 俺はその旋律を弾いてみせよう。 君だけのために。 いつだって君だけは変わらないで傍にいて・・・。 俺から離れたりしないで・・・。 |
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